BOKETTO / BOKETTO
昔から海が好きでよく入っていた。
透明で水深が浅い水にとても興味をひかれ、魅力を感じていた。透明な水越しに見える自分の足、
かすかな水圧、波に押される感覚、海全体に映り込む空の色、遠くにたっている波、ずっと奥にある水平線。
それらを風や潮の匂いと共に感じながらぼけっと過ごすのが好きだった。
ゆっくり過ごす、なにもしない時間をコンセプトに、自然に吹く風で動くサイトスペシフィックアートを制作した。
制作のきっかけとして、海でぼけっと過ごすのが好きだったこと、海にずっと浸かっていたい、ずっと遠くを見ていたい、
海で過ごすなにもしない時間に幸せを感じるという気持ちが強かったことが影響している。
同じサイズ、同じ構造のユニットを大量に制作しそれらを屋外にセッティングすることでセッティング場所の風を動力とする
海の波のような動きをするサイトスペシフィックアートを制作。
展示場所には、木漏れ日の光の美しさと、ベージュ色の階段が砂浜に見立てられることから東京藝術大学上野キャンパスの
付属図書館前を選んだ。階段を砂浜に見立て作品全体を波打ち際に見立てた。作品は 360°から鑑賞できるようになっており、
地面から鑑賞すると作品の動きが良く見え、階段の上から鑑賞すると面性が強くパンチングメタルの浮遊感が増し空の色が
パンチングメタルに反射して映るように設計し、海を想起させる作品群を図書館階段下に生み出した。
全体の合計は160ユニット。 ユニットはヤジロベエ構造になっている。220mm角のアルミパンチング板が
1ユニットにつき2枚取り付けてあり、その下部の構造により風が吹くとヤジロベエのような動きで上下し始める。
また、ユニット数や、重りの重さを変えることで、作品設置場所の風速に合わせることができる。
アルミパンチング板を素材に選ぶことで、アルミパンチング板の穴の抜けが" 水越しの自分の足 " を見立てる。
ヤジロベエ構造にすることで、"風の強弱"や"風が吹くと動く"表現が可能となった。
時間帯や天気や季節により作品の色が変化し環境に反応する。
アルミパンチング板の表面は鏡面磨き加工をすることで" 水面への空の映り込み "を実現し、
朝や昼、夕方と変わっていく空の色を写し込ませた。
面が広くかつ軽量なことから、風が吹くとパンチングメタルは上下するため繊細な風の道が可視化され、
" 上下に波打つ動き "を表現する。
建物や人が近くにあるとその色がパンチングメタルに反射して見えることでパンチングメタルの中に水のような存在を感じる。
木漏れ日の中に設置することでパンチングメタルの上下の動きに連動して光と影が揺らめく。
夜になると昼よりパンチングメタルの浮遊感が増す。
また人工の照明が反射すると、海に反射する灯台の灯りを眺めているような感覚になる。